【Guardian 報道】「もうダメだ」追い込まれたスリランカ人が街頭に 〜 2022年4月9日

・4月9日(土)、コロンボの通りを何千もの怒号と反政府スローガンが埋め尽くすなか、行商人のウプルは近くに静かに立ち、ドリンク商品を必死にデモ参加者に押し付けていた。しかし、心の中では彼らと一緒に歌っていた。
・スリランカは独立以来最悪の財政危機に陥り、食料、燃料、医薬品、電気がさらに不足し、ゴタバヤ・ラージャパクサ大統領(ゴータと呼ばれる)の退陣を求める声が上がる。コロンボ北部郊外の貧困地域に住む50歳のウプルは、生存の危機に追い込まれた人々の一人だ。
・ガソリンが不足して価格が高騰し、ウプルは借りていたトゥクトゥクの支払いができなくなり、唯一の収入手段を失った。彼と4人の子どもたちは、コメと水だけで生活している。野菜や粉ミルクは高過ぎる。
「今私たちにできることは毒を飲むことだけ。私たちはおしまいだ。ゴータはライオンだと思って投票したが、今となっては犬よりひどいとわかる。私は自分の国を愛しているが、子どもたちの時代に国が残るかわからない」

金融崩壊の影響は国の隅々まで及ぶ。
 停電で家や店舗は毎日8時間も暗い。
 人々は拾った木片での料理を余儀なくされた。

 ガソリンスタンドには何kmもの行列ができる。
 学校の試験や新聞は紙を買えないためになくなった。
 薬局や病院では医薬品が不足して医師は医療危機を宣言。
 食糧の供給が減って国民2,200万人に飢餓が迫っていると警告されている。
 コロンボでは信号が消え、交差点に警察が立つ。


・しかし、この国の激震を最も感じるのは街角である。この数週間、スリランカ史上かつてない抗議デモ運動が全国各地で行われた。組織的な運動ではなく、国を破滅に追いやった政治家への怒りが結集したもので、多くの人が「スリランカ版 アラブの春」と表現している。
街頭に出る人々の多くは若い世代であり、自分たちの未来が古い世代の分裂と無能によって燃やされると見て激怒している。
 26歳のアーティスト、デヴィは「何が起こるか分からないのでとても怖いが、抗議は皆の義務だ。状況は若者にとって非常に暗い。腐敗した政治家たちは、私たちの金を盗み、私たちの未来を破壊した。私たちはもっと良くなるべきだ」と言う。

・全国平和協議会のペレラ事務局長は、抗議デモの規模と範囲を「まったく前例がない」と表現した。
「あらゆるコミュニティから人々が街頭に出る様子は、これまで見たことがない。有機的に起きており、黒幕や政党が背後にいるわけではない。若者を中心に、中流階級、高齢者、裕福なビジネスマン、家族連れと、これまで一度も抗議デモ活動をしたことがない人たちが集まっている。
 怒りと熱意は冷めない。この抗議デモ運動はすぐには終わらないだろう」

・国中のデモ隊の怒りは、激しい民族主義を掲げて2019年に当選した強権派大統領、ラージャパクサに向けられている。スリランカで最も強い一族であり、内戦末期(戦争犯罪を犯したとされている)に軍を指揮した彼は、長く国政で最も恐れられていた人物であった。
 彼はこの2年間、憲法を改正して自らの行政権を強化し、首相の兄マヒンダを含む5人の身内が政府高官に就任した。
・しかし、政権獲得後の破壊的な経済政策(緊縮財政廃止、減税、インフレを押し上げた巨額紙幣増刷、膨れ上がった対外債務の再編を拒否、外貨の使い果たしなど)により、今や彼はスリランカ政治で最も軽蔑される人物になっている。抗議の叫びは “Gota Go Home” であり、これは彼の二重国籍にちなんでいる。
・先週、内閣は総辞職し、40人以上の国会議員が連立政権から離反した。しかし大統領は辞任するつもりはないと主張している。

・LGBT団体が開催したデモに参加したワラダスは、「彼が政府を運営できないのは明らかだ。去らなければならない、それが唯一の道だ」と述べた。
 ワラダスは、国旗とLGBTのレインボーフラッグ、労働組合のプラカードが混在する群衆に交じり、デモの多様性と無党派性をアピールした。いまだに民族間対立が激しいこの国では極めて異例のことだ。
近くでは仏教の聖職者がオレンジ色の衣をまとい、厳粛に政治の説明責任を訴える。
 道路沿いではIT業界で働く数百人が “error 404: democracy not found” と叫んでいる。
 LGBTの抗議デモはイスラム教徒の集会と合わさり、イスラム教徒がラマダンの断食を解くとサモサを配ってレインボーフラッグが翻る。
・ワラダスは、「今回の危機の本質は、この影響も受けていない国民がいないこと。友人の多くは家賃の支払いに苦労し、仕事を失い、食べ物も薬もない。彼らは私たちの仲間を見殺しにした」と主張する。

・24歳の学生チャルは、2002年からスリランカを支配してきたラージャパクサ一族に怒りの声を上げた。
「すべては毒のあるナショナリズムと悪い統治を行うラージャパクサ家のせいだ。人々は飢え、我々は彼のためにひどい借金を抱え、明かりを点けることさえできない。しかし彼は責任を取ろうとしない。希望がない」
・制度上、国会が大統領を選択できず、政治の行詰りが懸念されている。
 しかし主要野党は、国会で与党への不信任案を準備している。野党の狙いは、弱体化する大統領が退陣するか、大統領権限を縮小する法案を通して大統領の影響外の新政府樹立を可能にすること。

・9日(土)にコロンボで最大規模の抗議デモが行われ、今では考えられない傲慢さの記念碑とされる過去数年間の多くの高級開発地の遊歩道沿いに、何千人もが集まった。
・69歳と72歳の友人同士が国旗に包まれて群衆のなかに立っていた。
「私たちから奪ったお金を全部返して、政治家を辞めてこの国から出て行ってほしい。彼(大統領)はこの国の人間ではないのに、我々から何十億も盗み、我々が何も持っていないのに贅沢な生活をしている。アメリカのパスポートを持つ彼と違って、私たちには他に行く国がない。
 26年間続いた戦争でも、こんなにひどいことはなかった。こんなひどい国は見たことがない」

コメント

タイトルとURLをコピーしました