【CNN 報道】スリランカ経済政治危機、知っておくべきこと 〜 2022年4月7日

・人口2,200万人の島国スリランカは、外出禁止令に反してデモ隊が街に繰り出し、政府閣僚が一斉に辞任するなど、経済的政治的危機に直面している。
・不満の原因は、1948年の独立以来最悪の経済不況にある。深刻なインフレにより基本的な商品の価格が高騰している。
・数週間前からくすぶっていた怒りは、先週木曜日に沸騰し、抗議行動を暴力的にし、政府を混乱させた。

<経済危機の原因は何なのか?>
・専門家によれば、この危機は、少しの不運と政府の失政により何年も前から生じていた。
・コロンボのシンクタンク Advocata Institute ジャフェリー会長は、政府は過去10年間、公共サービスの維持に外国金融機関から巨額の資金を借りてきたと述べる。
 この借金の嵐が、モンスーンなどの自然災害から農家の収穫を減らした化学肥料禁止などの人災まで、スリランカ経済への打撃を重ねている。
・2018年の大統領による首相解任に発する憲法危機、翌19年の教会や高級ホテルで数百人が犠牲となったイースター・サンデー爆破爆破テロ事件、20年以降のコロナ危機により、この問題はさらに深刻化した。

・巨額の赤字に直面したゴタバヤ・ラージャパクサ大統領は、経済活性化を狙って減税を実施したが失敗に終わった。この政策は裏目に出て、かえって政府歳入を圧迫した。格付け会社がスリランカの格付けをデフォルトに近いレベルまで下げ、外国市場へのアクセスを失った。
・その後、政府債務返済に外貨準備高を使わざるを得ず、2018年に69億米ドルあった外貨準備高が今年は22億米ドルにまで減少した。燃料や他必需品の輸入に影響を与え、物価を高騰させた。

・加えて3月、政府はルピーを変動させた。外国為替市場の需要と供給に基づいて価格が決定されるようになった。国際通貨基金(IMF) の融資を受けるため、通貨を切り下げて外国からの送金を強化する目的だったようだ。
 しかし、ルピーは対米ドルで急落し、国民には事態を悪化させただけだった。

<一般国民に何を意味するのか?>
この危機はスリランカ国民の日常生活を、基本的な物資を求めて行列に並ぶという終わりのないサイクルに変えてしまった。
・この数週間、冷蔵庫やエアコン、扇風機を動かすことができず、店舗は閉店を余儀なくされている。
 ガソリンスタンドには兵士が配置され、灼熱のなか、何時間も並んでガソリンを入れる客を落ち着かせている。待っている間に死んでしまった人もいる。
・首都コロンボに住むある母親は、家族に食事を作るためガスを待っていると語った。また、パンの値段が2倍以上になった、トゥクトゥク運転手は買える燃料が少なすぎて生活が成り立たない、と言う。

・家族を養うために働かなければならないが、同時に物資を手に入れるための行列にも並ばなければならないという、無理な立場に立たされている人もいる。2人の幼い子どもがいる清掃員は、食料を買う列に並ぶため仕事をそっと抜け出して急いで戻ると話した。
・貯蓄のある中間層でさえ、医薬品やガスなど必需品の不足を恐れて不満を感じている。
 そして、10時間以上にもなる頻繁な停電が生活をより困難にしている。

<デモはどうなっているのか?>
・コロンボでは3月下旬にデモ隊が街頭に出て、政府に対応と説明責任を求めている。
・国民の不満と怒りは3月31日(木)に爆発し、デモ隊は大統領私邸の外でレンガを投げつけ、火を放った。
 警察は催涙ガスと放水銃でデモを鎮圧し、外出禁止令を出した。
 大統領は4月1日(金)に全土に緊急事態を宣言し、当局に令状なしでの拘束権限を与え、SNSを遮断した。
 しかし翌日には、外出禁止令に反して抗議デモが行われ、警察は数百人のデモ参加者を逮捕した。
・以降も抗議デモ行動は続いているが、ほぼ平和的な状態が続いている。
 5日(火)夜、学生デモ隊の群衆が再びラージャパクサ一族の住居を取り囲み、辞任を要求した。
・緊急事態宣言は5日(火)に解除された。

<内閣はどうなっているのか?>
・4月3日(日)、政府の全閣僚が辞任し、事実上の解散状態となった。
 辞任した閣僚には大統領の甥も含まれ、彼はSNSの遮断を「決して容認できない」と批判していた。
・混乱する政権を前に、大統領は4日(月)、野党をなだめるべく内閣改造を試みた。暫定的に政府を運営するため、財務大臣など4人の閣僚が任命された。
 しかしそのわずか1日後、新財務大臣が辞職した。彼は辞職について、「強い要請があってその職に就いたが、新たな積極的なこれまでにない対策を取る必要がある」と気づいたと説明した。
この改造は政権からのさらなる離脱を止めることができなかった。与党は連立政権を組んでいた国会議員が離脱し、5日(火)までに41議席を失った。与党は104議席となり、国会での過半数を失った。

<政府はどう言ったか?>
・大統領は4月4日(月)に声明を発表したが、辞任については言及せず、「全国民と将来世代のために協力する」よう全政党に呼びかけるにとどめた。
 声明では、「現在の危機はいくつかの経済的要因と世界的な動きの結果である。アジアを代表する民主主義国家として、民主主義の枠組みのなかで解決策を見出さなければならない」と述べている。
・6日(水)、フェルナンド政府首席補佐官は国会で、大統領は「いかなる状況でも」辞任しないと述べた。同氏は連立与党の一員で、大統領の側近とみられている。
・大統領は先月の国民への演説で、「この危機は私が作り出したものではない」として、問題を解決しようとしていると述べていた。
・1日(金)、マヒンダ・ラージャパクサ首相(大統領の兄、元大統領)はCNNに対し、政府が経済運営を誤ったというのは間違っており、コロナ危機が原因の一つだと述べた。

<次はどうする?>
・スリランカは現在、IMFに財政支援を求め、支援の可能性がある地域の大国に目を向けている。
・大統領は先月の演説で、IMFとの協力の長所と短所を比較し、これまで政府が消極的だっIMFからの救済を目指すと決めたと述べた。
・中国とインドにも支援を要請しており、インドは3月に10億米ドルの融資枠を供与している。
 しかし一部のアナリストは、この支援は危機を解決するどころかむしろ長引かせるかもしれないと警告する。
・中央銀行によると、インフレ率は9月の6.2%から2月には17.5%とほぼ3倍になった。
 今年中に約40億米ドルの債務を返済しなければならない。それには7月満期の国際ソブリン債10億米ドルを含む。

・一連の状況に国際社会は警鐘を鳴らしている。国連人権高等弁務官事務所は懸念を表明し、
「外出禁止令、SNS遮断、抗議デモ解散を強いる警察の対応は、人々による不満の表現を妨げたり思いとどまらせたりする可能性があり、反対意見の抑圧や平和的抗議の妨害をすべきではない」と述べ、国連は状況を注視しているとして軍事化への流れやチェックアンドバランス制度の弱体化に警告を発した。

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