・4月4日(月)、経済危機の深刻化と政府内の混乱に直面するゴタバヤ・ラージャパクサ大統領は、自身の退陣を求める激しい街頭抗議デモ行動の終結を狙い、野党指導者に政権への参加を呼びかけた。
・抗議デモは週末の外出禁止令を無視して、その多くが野党や学生リーダーによって結集され、食料と燃料の不足、国を事実上支配するラージャパクサ一族に抗議。
・スリランカはここ数十年で最悪の経済危機を経験している。外貨不足と高騰するインフレ(3月には食料品インフレだけで30%に迫った)、コロナ危機で枯渇した観光業の悲惨な落ち込みが続く。2,300万人の国民は、牛乳、調理用ガス、そして紙さえも市場で買うことに苦労している。
10年前には年間8%の成長を遂げ、中産階級が着実に台頭していた経済に、悲惨な転機となった。
・月曜日、大統領は、野党を含む全政党が「民主主義の枠組みの中で」団結するよう訴えた。
大統領府は「国家に必要であり、全国民と将来世代のために協力する時だ」と声明で述べる。大統領は内閣を改造し、弟で財務大臣のバシル・ラージャパクサ氏を解任、他政党と新政権樹立に交渉すると述べた。
・しかし野党はこの申出を拒否し、大統領がさらに踏み込まない限り政権には参加しないと述べた。兄マヒンダ・ラージャパクサ首相率いる与党 SLPP が権力を手放すよう要求した。
野党議員は「国民は大統領とラージャパクサ家の退陣を求めている。我々は国民の声を支持し、選挙を要求する」と述べた。
・経済のメルトダウンと国内の混乱は、過去20年間の大半をスリランカを支配してきた一族への挑戦である。
マヒンダ・ラージャパクサは2005年〜15年に大統領を務めた。汚職疑惑に悩まされながらも、2009年にタミル人分離主義者への流血の爆撃作戦で数十年にわたる内戦を終結させ、多くの支持者から愛された。
2019年選挙ではラージャパクサ家とその政党が圧勝し、ゴタバヤ・ラージャパクサは大統領として、兄弟や甥を財務、灌漑、スポーツなど主要閣僚に任命した。マヒンダは首相となった。
・現在の政治の行詰りは、抗議デモの一団がコロンボの大統領私邸を襲撃、治安機関と衝突した緊張の1週間を経て、さらなる抗議デモ行動を煽る可能性がある。
・1日(金)に夜間外出禁止令が発表されたが、コロンボではデモ参加者が集まり続け数百人が逮捕された。中部では大学生を解散させるために警察が催涙ガスと放水銃を使用した。
・3日(日)には数時間にわたり、Twitterを含むSNSを遮断した。しかし市民は VPN で遮断を回避、動画が拡散した。
・話題になっている動画で、ナディッシュという名の抗議者が、大統領私邸を警備する警察官に熱弁をふるった様子が流れている。彼は逮捕された。
「今日街頭に出たのは、子どもを養えないからだ。あなた方は法執行機関として国を守ると宣誓した。私たちを叩かないでくれ。催涙ガスや放水銃を撃たないでくれ。私たちに加わってくれ」
Facebookで120万回以上再生された。
・4日(月)には、コロンボの独立記念広場から南部タンガーレまで、全国で抗議デモが発生し続け、マヒンダ・ラージャパクサの自宅前に集まった群衆を警察が撃退した。
・専門家は、スリランカの経済危機は何年も前から起きていたと言う。
・2019年以降、重要な外貨獲得源の観光業が2回の衝撃を受けた。2019年に連続爆破テロ事件が起き、数百人が死亡した。1年も経たないうちにコロナ危機が発生し、航空便と外国人の流れが寸断された。
・2019年のラージャパクサ一族の勝利後、彼らは減税を行い、さらに税収を減らした。
政府は昨年、有機農業を促進すると主張、化学肥料の輸入を禁止した。農業生産はすぐに崩壊、食糧供給不足がインフレを招き、輸入依存が高まった。大きなダメージを受けた。
・エコノミストは、
「外貨準備高への圧力を減らそうとした政策が、逆に外貨準備高への圧力を高める結果となった。スリランカの経済危機は『誤った政策と欠陥ある外部アドバイス』の結果だ」と述べる。
・政治アナリストは警告する。
「今回の抗議デモ行動は『前代未聞』。スリランカの歴史上、コミュニティの分裂や超党派でもない、この性質の蜂起を見たことがない。
しかし、多くの国民が飢えているために状況は不安定だ。政府がやっていることと国民が望んでいることの間に非常に大きな隔たりがある。深刻な暴力につながる可能性がある」
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