・「ゴー・ゴータ、ゴタバヤ」
街頭に出た数千人の人々は、ゴタバヤ・ラージャパクサ大統領の退陣を要求し、専門家は「アラブの春」のスリランカ版と呼ぶ緊急事態に対抗して叫んだ。大統領は緊急事態宣言を撤回したが、抗議デモは止まっていない。
・在ワシントンのシンクタンク、The Millennium Project のアベヤグーナセケラ上級研究員はこの動きを、スリランカの「アラブの春」だと指摘する。権威主義的な支配、経済失政、一族支配を終わらせて民主主義を導入しようとする民衆の蜂起だと言う。
・「アラブの春」は、2010年にチュニジアでの焼身自殺から始まり、権威主義や汚職、貧困に対し、エジプト、リビア、シリアなどアラブ諸国に広がった一連の抗議行動を指す。「アラブの春」では、エジプトのムバラク大統領(当時)を含む4人もの独裁者が失脚した。
・強大なラージャパクサ一族は、数十年にわたりスリランカを支配、短期間の政権離脱を経て2019年にゴタバヤが大統領に戻った。ゴタバヤはかつて、数十年続いた内戦を2009年に終結させ、タミル人分離主義者への流血を伴った空爆作戦を実行して人気を得た。
汚職疑惑に悩まされてきたが、現在の不満は経済失政に起因している。
・少なくとも41人の国会議員が連立与党から離脱し、ラージャパクサ政権は国会で少数派となった。
同じ日に、サブリー財務大臣が就任わずか1日で辞任し、政府はさらなる打撃を受けた。
サブリー財務大臣は声明で、「私は常に国の利益のために行動してきたと信じている。問題解決には、新鮮で積極的でこれまでにない手段が必要」と述べた。
・シンガポール国立大学アッタナヤケ研究員は、スリランカと同様、「アラブの春」もチュニジアの経済停滞と汚職が引き金だったと指摘する。
「スリランカでも経済低迷、インフレ高騰、必需品不足を背景とした反政府デモが起こってている。『アラブの春』の時と同じスローガンも使われている」と述べた。
・一方で、イギリス・エコノミスト誌の調査部門のシンクタンク、Economic Intelligence Unit フン・アジア担当主席エコノミストは、「スリランカの不満はコロナ危機発生と誤った政策選択にによる」として、「アラブの春」の類似性に異を唱える。
・4日(月)、食料品と燃料の価格上昇に国民の怒りと抗議が強まる中、閣僚と中央銀行総裁が辞任。
・スリランカは過去56年間に16回、国際通貨基金(IMF) に救済を求めている。これはパキスタンに次いで2番目に多い。
フン氏は「IMFからの新たな融資は助けになるが、その後緊縮財政が待つ。収支不均衡の解消には役立つが、増税が反政府感情を大きくするだろう」と述べる。
・アッタナヤケ氏は政府への失望感の高まりを指摘し、
「今の出来事は、国民が政治指導者を信頼していないこと、そして焦り、不満、失望を表している。国民はもう失策、誤操作、ミスを許さないだろう」と話す。
・辞任した26人の閣僚には、マヒンダ・ラージャパクサ首相の息子ナマル氏も含まれ、「大統領と首相による『国民と政府の安定を確立するための決断』に寄与するよう望む」とツイートした。
・野党国会議員ハーシャ・デ・シルバ氏は CNBC のインタビューに、再選挙のみが解決策を提示できるとして、以下を述べた。
「今回の辞任は一時的なものに過ぎない。4人だけを閣僚に任命したが、その留任に信頼性があるとは思えない。信頼を取り戻さない限り、この国の経済をどう軌道に乗せるかがわからない。唯一の方法は新しい人に新しい権限を与えることだ。
この圧力が高まり始めたのはわずか48時間前であり、大統領が退陣に追い込まれるかどうかを判断するのは時期尚早。国会は2週間後に開かれる。その時に、政府がまだ過半数を維持しているかどうかがわかるだろう」
・同議員は国民統合政府への参加には前向きだとしつつこう続けた。
「この国はもうラージャパクサ政権を容認しない。ラージャパクサ家と政権を運営することは不可能だ」
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