・スリランカの崩壊が報じられている。食料や燃料の深刻な不足に苛まれたデモ隊が街頭に出て、複数の閣僚が2日(日)遅くに辞任を申し出た。
・社会不安はおそらく、約440億米ドルの国際債務再編を加速させる。スリランカの問題は長年の不始末に起因するものだが、その早い崩壊は、物価の高騰に突然直面したヨーロッパからアジアまでの頑丈な経済への警告である。
・欧米がウクライナ侵攻への罰としてロシアに制裁バズーカを発射した後、スリランカの国際収支危機は激化。計画停電と非常事態により、重要な外貨獲得源の観光客が遠のいている。3月の食料品インフレ率は30.2%と驚異的な数字になった。
・中央銀行が導入した通貨切下げを含め、1か月で対米ドル為替レートは40%安に。国際通貨基金(IMF) が試算した公的債務はGDP比120%で、持続可能な水準より40ポイント高い。
・IMFは、債務を持続可能なレベルまで削減するために必要な政策は、経済的にも政治的にも実行不可能だと指摘している。7月に満期を迎えるスリランカの10億ドルの国際ソブリン債は、2月初めには約74セントで取引されていたが、現在は67セント。ヘアカットは中国からウォール街まで広がるだろう。昨年4月時点で、スリランカの外国債務の47%を市場からの借入金が占めていたためだ。
・インフレがもたらす政治への影響を思い知らされることになる。
ロシアのウクライナ侵攻前、インフレ率が2ケタに達していたアジアの国はほとんどなかった。スリランカとパキスタンが顕著で、カーン・パキスタン首相は不信任投票をなんとかかわした。貧しい国ほど食料品価格の高騰に脆弱である。貧困層は食料品に多くを支出している。
・しかし、1月のIMFの推計によると、コロナ危機によるサプライチェーンと貿易への混乱は、2019年から22年の間に、先進国全体が新興国よりも3倍の価格上昇に直面すると示している。
・各国が物価高騰への対処に減税や補助金の増額を急ぐかどうかにかかわらず、スリランカの早い崩壊は、安心している政治へのリスクに警告を発している。
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